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男性更年期(LOH症候群)とは?身体に関わる専門家として知るべき症状・原因・サポートの視点

はじめに

「最近なんとなく体がだるい」「急にイライラする」「眠れない日が続いている」――中高年の男性患者やクライアントから、こうした訴えを耳にしたことはないだろうか。実はこれらの症状、いわゆる「男性更年期」が関係している可能性がある。

女性特有のものと思われがちな更年期障害だが、日本内分泌学会によれば、男性にも同様の症状が起こりうることが明確に示されている。医療従事者としてこの知識を持つことは、患者やクライアントへの適切なサポートに直結する。


男性更年期とは何か

LOH症候群という正式名称

男性更年期障害は、医学的には**加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群:Late Onset Hypogonadism)**と呼ばれる。日本内分泌学会によれば、男性ホルモン(テストステロン)の低下によって引き起こされる、心身の多様な症状を総称したものである。

女性の更年期との違い

女性の更年期は、閉経前後の約10年間にエストロゲンが急激に減少することで引き起こされる。一方、男性のテストステロンは20代をピークに、中年以降から加齢とともに穏やかに減少していく。

この点が大きな違いであり、男性では減少の速さや度合い・時期に個人差が大きい。そのため、40代以降のどの年代でも更年期症状が現れる可能性があり、気づかれにくいという特徴がある。


テストステロン低下がもたらす多様な症状

身体的症状

テストステロンの低下は、筋力・体力の面だけでなく、全身に広範な影響を及ぼす:

  • 全身の倦怠感・疲れやすさ
  • 筋肉量の減少(サルコペニア)
  • ほてり・発汗
  • 関節痛・筋肉痛
  • 骨密度の低下(骨粗しょう症リスク上昇)

精神・心理的症状

精神面への影響も見逃せない:

  • 抑うつ・気力の低下
  • 集中力・記憶力の低下
  • 不眠・睡眠の質の悪化
  • イライラ・情緒不安定

性機能に関する症状

日本内分泌学会によれば、ED(勃起障害)は60代の日本人の60%以上に見られ、珍しいことではない。また、EDは血管の健康と深く関係しており、初期の動脈硬化でも影響が現れやすいことから、「最初に自覚できる生活習慣病」としてとらえることができる。


テストステロン低下が引き起こす全身リスク

生活習慣病・代謝疾患との関連

関連疾患・状態テストステロン低下による影響
糖尿病インスリン感受性の低下
肥満・メタボリックシンドローム内臓脂肪の増加
心血管疾患動脈硬化・血管内皮機能の低下
骨粗しょう症骨密度の低下
認知機能低下認知症リスクとの関連

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日本メンズヘルス医学会によれば、中高年の就労中男性の約10%が男性更年期障害の症状に悩まされているとも報告されており、社会的・経済的観点からも注目度の高い問題である。

サルコペニアとの深い関係

テストステロンは筋肉量と筋力の維持に欠かせないホルモンである。低下が進むと、筋肉の減少(サルコペニア)が進行し、活動量の低下・転倒リスクの上昇・QOL低下という悪循環を招く。これは、柔道整復師・理学療法士・スポーツトレーナーが日常的に接する問題と直結している。


診断と治療の現状

診断の基準

日本泌尿器科学会・日本メンズヘルス医学会が定めるLOH症候群診療の手引きでは、症状に加えて血液検査による客観的指標を重視している。日本人男性では遊離テストステロン(FT)値8.5 pg/mL未満を治療介入の基準としており、40代の約10%、50代の約20%、60代の約50%がFT値の境界域以下であるとされている。

治療の選択肢

主な治療法として、以下のアプローチが用いられている:

  1. テストステロン補充療法(TRT):筋力・骨密度・代謝・精神症状・性機能など幅広い効果が報告されている
  2. 生活習慣の改善:適度な運動、バランスのとれた栄養、十分な睡眠、ストレス管理
  3. 精神的ケア:カウンセリング、認知行動療法などの心理的サポート

医療従事者としてできること

問診での気づきが早期対応につながる

柔道整復師、鍼灸師、理学療法士、スポーツトレーナー、セラピストは、患者やクライアントと長期的な関係を築く立場にある。日常の問診の中で、以下のような変化に気づけることが重要である:

  • 理由のはっきりしない慢性的な疲労感
  • 筋力低下・体型の変化
  • 気力・意欲の低下
  • 睡眠の変化や気分の落ち込み

これらの背景に男性更年期が関係している可能性を念頭に置くことで、適切な受診勧奨や専門医への紹介が可能となる。

運動・生活習慣の指導でサポート

テストステロンは適度な運動(特に筋力トレーニング)によって分泌が促進されることが知られている。医療従事者として、患者の身体状態に合わせた運動プログラムの提案、姿勢改善、筋力維持のアプローチは、男性更年期症状の緩和に直接的に貢献できる。


おわりに:男性にも更年期がある、だからこそ知識が必要

更年期は女性だけのものではない。男性にも加齢に伴うホルモン変化があり、それが心身に大きな影響を与えることが明らかになっている。

日々の臨床の中で接する中高年男性の「なんとなくの不調」の背景に、テストステロン低下という生理的変化が関わっている可能性がある。その知識を持つことで、より的確なアプローチと専門医への連携が可能になる。

**男性にも更年期が存在しているからこそ、この知識を知っておくことは、私たち医療従事者にとって決して無駄にはならない。**患者やクライアントのQOL向上に貢献するために、ぜひ男性更年期(LOH症候群)についての理解を深めてほしい。


参考情報


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著者:ミラウェルの中の人
mirawell メディアディレクター

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ミラウェルのメディアディレクター
これまで、約130を超えるセミナーコンテンツの
プロデュース/制作/集客/ディレクションを担当。

<保有資格>
・柔道整復師
・NSCA-CPT
・JADP認定スポーツメンタルトレーナー

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