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凍結肩(五十肩)患者における頭部前方偏位(FHP)の有病率

はじめに

凍結肩(フローズンショルダー)は肩関節包の炎症と線維化により、肩の可動域が進行性に制限される疾患。全人口の2%強に発症し、糖尿病を有する人ではおよそ20%と高い発症率を示す。発症年齢は40〜60歳が中心で、両側性に生じることも多い。今回紹介する研究は、インド・プネー地域で実施された観察研究で、凍結肩患者における「頭部前方偏位(Forward Head Posture:FHP)」の合併割合を、頭蓋脊椎角(Craniovertebral Angle:CVA)という指標を用いて定量的に検証したもの。肩関節の機能障害が、頭部・頸部のアライメントにまで波及する可能性を示すデータとして、臨床の現場で押さえておきたい内容。

ポイント

臨床的に凍結肩と診断された67名(男性37名、女性30名、左側罹患31名、右側罹患36名)を対象に、写真計測法とMB Ruler5.3ソフトウェアを用いてCVAを測定。CVAは耳の耳珠とC7棘突起を結ぶ線と水平線がなす角度で、50°未満をFHPと判定する基準として用いられた。全対象者のCVAは32°〜66°の範囲に分布し、67名中45名、すなわち67.2%がFHPに該当する結果となった。これは凍結肩患者のおよそ3分の2が頭部前方偏位を伴っていることを意味し、両者の間に無視できない関連性があることを示す。

病期別に見たFHPの発生割合

研究では対象者を疾患の進行度に応じてステージ1(20名)、ステージ2(22名)、ステージ3(25名)の3群に分類し、それぞれのCVAを測定した。ステージ1では20名中14名(70.0%)、ステージ2では22名中15名(68.1%)、ステージ3では25名中16名(64.0%)がFHPに該当する結果となった。いずれの病期でも6割以上という高い割合でFHPが確認され、凍結肩の発症初期から頭部前方偏位が既に生じている可能性が示唆される。病期が進むにつれて割合がわずかに低下する傾向も見られたが、いずれにしても病期を問わず高頻度でFHPが合併する点は臨床上重要な情報となる。

バイオメカニクス的な関連性と臨床的意義

論文の考察では、凍結肩に伴う関節包の癒着や拘縮が肩甲骨と上腕骨の正常なリズムを崩し、いわゆる「肩すくめ動作(shrug sign)」のような代償運動を引き起こすメカニズムが説明されている。この代償により僧帽筋上部や肩甲挙筋が過活動になる一方、菱形筋などは筋力低下や伸長位となり、頸椎のアライメントにも影響が及ぶ。結果として頭部の重心が前方に移動し、CVAの減少すなわちFHPへとつながるという機序が示されている。この関連性を踏まえると、凍結肩に対する介入は肩関節そのものへのアプローチだけでは不十分であり、頸部・肩甲帯を含めた姿勢評価と、僧帽筋・肩甲挙筋・菱形筋などのバランス調整を組み込んだ徒手療法や姿勢教育を併用することが望ましいと言える。

参考文献・引用元
Saste R, Jerome A, Chidambaram R. Prevalence of forward head posture in patients diagnosed clinically with frozen shoulder. Int J Health Sci Res. 2024;14(5):77-83. https://www.ijhsr.org/IJHSR_Vol.14_Issue.5_May2024/IJHSR09.pdf