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急性痛から慢性痛への移行を予測する~ED受診1週間後の痛みの持続が鍵に

はじめに

救急外来(ED)を受診する急性痛患者の中には、その後も痛みが長期化し、慢性痛へ移行するケースが少なくない。しかし、どの患者が慢性化するのかを急性期の段階で予測することは容易ではない。今回紹介するのは、米国ニューヨーク市の2つのEDで実施された前向きコホート研究。オピオイド処方を要するほどの急性痛(発症10日以内)を有する成人患者を対象に、ED受診時・1週間後・6ヶ月後の3時点で追跡調査を行い、急性痛が慢性痛へ移行する頻度と、その予測因子を検証した内容である。特に、ED受診から1週間後の時点で痛みが残っていることが、6ヶ月後の慢性痛とどのように関連するのかを検討した点が本研究の特徴である。

ポイント

本研究では、733名にアプローチし484名が登録、そのうち450名(93%)が1週間後、410名(85%)が6ヶ月後のデータを提供した。ED受診から1週間後、453名中348名(77%、95%信頼区間73-80%)が受傷部位の痛みを継続して報告している。そして6ヶ月後には、408名中110名(27%、95%信頼区間23-31%)が新規発症の慢性痛を報告した。慢性痛は、ED退院後50%超の日数で痛みを経験した場合と定義されている。さらにロジスティック回帰分析の結果、1週間後の時点で痛みが残っていることは、6ヶ月後の慢性痛と有意に関連していた(オッズ比3.6、95%信頼区間1.6-8.5)。つまり、急性痛患者のおよそ4人に1人が半年後に慢性痛へ移行しており、その後の慢性化を示唆する兆候が、受傷後わずか1週間の時点ですでに現れている可能性が示された。

急性痛から慢性痛への移行率

本研究における重要な知見の一つは、急性痛患者の約27%が6ヶ月後に慢性痛へ移行していたことである。6ヶ月後のデータが得られた408名のうち110名が慢性痛を報告しており、約4人に1人という割合に相当する。本研究の対象者は、オピオイド処方を要するレベルの急性痛を有する成人であり、比較的重症度の高い患者群であった点には留意が必要である。それでも、急性期の痛みがその後も長期化する患者が一定数存在することは、初期対応と経過観察の重要性を示す結果といえる。柔道整復師の施術現場においても、急性外傷や急性腰痛・頸部痛などを訴える患者に対して、単に現在の痛みを評価するだけでなく、その後の経過を継続的に確認することが重要と考えられる。

1週間後の痛みの残存が慢性化を予測

本研究でもう一つ注目されるのが、ED受診から1週間後の痛みの残存と、6ヶ月後の慢性痛との関連である。1週間後には453名中348名(77%)が受傷部位の痛みを継続して報告しており、この時点で痛みが残っていた患者は、痛みが残っていなかった患者と比較して、6ヶ月後に慢性痛を呈するオッズが3.6倍高かった(95%信頼区間1.6-8.5)。この結果から、受傷後わずか1週間という早期の段階でも、その後の慢性化リスクをある程度見極められる可能性が示唆される。臨床現場では、初回対応後の1週間程度の時点で痛みの程度や経過を改めて評価し、改善が乏しい場合には必要に応じて施術方針の見直しや医療機関との連携を検討することが重要といえる。急性期の痛みが長引いていることを単なる回復の遅れとして捉えるのではなく、慢性化リスクを評価するきっかけとして活用することが、本研究から得られる実践的な示唆といえる。


出典データ(PDF)

Friedman BW, Abril L, Naeem F, Irizarry E, Chertoff A, McGregor M, Bijur PE, Gallagher EJ. Predicting the Transition to Chronic Pain 6 Months After an Emergency Department Visit for Acute Pain: A Prospective Cohort Study. The Journal of Emergency Medicine. 2020;59(6):805-811.
原著論文(PMC)