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冷気で気道抵抗が最大42%上昇―咳と感染症から選手・患者を守る季節の備え

はじめに

朝晩の冷え込みが強まるこの時期、「咳が出る」「風邪をひきやすい」という訴えが増える。冷たい空気を吸うことは、呼吸器にどんな影響を与えるのか。本記事では、冷気と呼吸・咳・感染症の関係を、3本の研究を中心に整理する。


冷たい空気を吸うと、気道に何が起きるのか

鼻から吸った冷気で気道抵抗が上がる

FontanariらがJournal of Applied Physiology(1996年)に発表した研究は、健常者が冷たく乾いた空気や乾燥した空気、湿った空気を鼻から吸ったときの気道抵抗(Rint)の変化を調べた。

鼻から吸入した空気気道抵抗の変化
冷たく乾いた空気(−4℃)17%上昇
乾燥した空気のみ21%上昇
冷たく乾いた空気(−10℃)42%上昇
湿った室内の空気変化なし

※同研究の結果より作成。モバイル表示対応

「冷たさ」だけでなく「乾燥」も要因

湿った空気では変化がなく、乾燥した空気だけでも上昇した点が重要だ。また、鼻の麻酔や抗コリン薬の吸入で冷気への反応は見られなくなり、鼻からの神経反射が関わると考えられている。口から吸った場合は、乾燥した空気や冷たく乾いた空気でも気道抵抗は変わらなかった。


冷気と感染症―鼻の防御機能への影響

粘液線毛クリアランスが低下する

EcclesがRhinology誌(2015年)に発表したレビューは、冷気を吸うと鼻腔が冷やされ、粘液線毛クリアランスの低下と白血球の貪食の抑制が起こり、感染に対する防御が弱まる可能性を整理している。冷気暴露と上気道感染の関連を支持する研究はあるものの、この分野には議論も残されている。

2026年の総説が示す「入り口」仮説

Gozhenkoらの総説(Pedagogy and Psychology of Sport、2026年)は、冷気が鼻粘膜の温度を15〜20℃に下げ、線毛の動きを約半分に減らすと整理している。粘液の輸送に要する時間は、通常の10〜20分から60分超まで延びるという。さらに、急性寒冷呼吸器症候群という概念を提案し、冷えが「入り口」となってウイルスへの感受性を高める可能性を論じた。ただし、これは新しい用語を提案するナラティブレビューであり、診断基準として確立したものではない点に注意したい。


咳とスポーツ―冷気下のトレーニングで気をつけたいこと

冬のアスリートに多い咳

エリート選手を対象とした研究(PMC掲載)によれば、冷気下でトレーニングする選手は、冬に咳が悪化したと訴えやすい。一方で、多くの選手では気管支収縮や気道の炎症、咳反射の過敏とは関連がみられなかった。

喘息や気道過敏性への配慮

冷気が呼吸器に与える影響をまとめたレビュー(PMC掲載)では、冬季競技の選手で気道過敏性、喘息、慢性の咳が多いことが述べられている。冷気下の運動は、喘息のある人では気管支収縮を引き起こしうる。


現場でできる予防対策

環境を整える

政府広報オンラインは、空気が乾燥するとのどの粘膜の防御機能が低下するとし、室内では加湿器などで湿度50〜60%を保つことを勧めている。トレーナールームやリハビリ室でも、換気とあわせて意識したい。

呼吸経路と冷気への対応

Fontanariらの結果から、鼻呼吸か口呼吸かで気道の反応は異なる。一律に「鼻呼吸がよい」とは言い切れないため、個々の症状に合わせた対応が必要だ。

感染対策の基本を徹底する

厚生労働省の急性呼吸器感染症(ARI)総合対策は、手洗いとマスク着用を含む咳エチケットが有効だとしている。厚生労働省の「3つの正しい咳エチケット」もあわせて参照してほしい。


おわりに

体調を崩しやすい季節だからこそ、まずは迎え入れる環境を見直したい。施設やチームでは、換気、手洗いの場所、体調不良者への声かけルールを確認しておきたい。そのうえで、患者様や選手と触れ合う中で、冷え込む朝晩の過ごし方や手洗いの習慣を一言添えるだけでも、予防への意識は変わる。咳が長引く、息苦しさや喘鳴がある、発熱を伴うといった場合は、医療機関の受診を勧めることも大切だ。

予防の大切さを発信するスピーカーとなることも、健康に従事する私たちの重要な役割の一つである。ここで紹介した内容を、受け入れ環境の予防対策や日々のサポートにぜひ活かしてほしい。


参考情報


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著者:ミラウェルの中の人
mirawell メディアディレクター

治療家・トレーナーのためのセミナー情報サイト
ミラウェルのメディアディレクター
これまで、約150を超えるセミナーコンテンツ(協会等の外部主催含む)の
プロデュース/コンテンツ制作/集客/ディレクションを担当。

<保有資格>
・柔道整復師
・NSCA-CPT
・JADP認定スポーツメンタルトレーナー
・認定フェムテックエキスパート (日本フェムテック協会認定資格2級)

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