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理学療法士国家資格のオンライン化・デジタル化について

理学療法士国家試験に合格し申請書を提出すると、免許証が交付されるなど各種手続きにおいて紙媒体を介しておこなわれてきました。

法改正により、2024年から国家資格のオンライン化・デジタル化が推進され国家資格ごとに時期は異なりますが、随時オンライン化・デジタル化が進められています。

本記事では、理学療法士国家資格を中心に現状と国家資格のオンライン化・デジタル化でどのように変わっていくのかについて解説します。ぜひ参考にしてください。

理学療法士の現状

理学療法士の養成校数の増加に伴い、資格保有者数は年々増加しています。そのため、国家資格のオンライン化デジタル化は多くの理学療法士に関係することです。理学療法士の養成校数の推移や合格者数について解説します。

  • 理学療法士養成校数
  • 理学療法士の合格者数

それぞれみていきましょう。

理学療法士の養成校数

理学療法士の養成校数は、昭和38年時点では1校でした。平成10年には100校、平成19年には218校となり、約10年間で118校増加しています。
その後、増加幅は低下したものの令和3年には279校となりました。

以後微増減を繰り返しながら令和5年では275校、最新のデータでは令和6年9月時点で279校の養成校があります。年度別理学療法士養成校数の推移は、以下のとおりです。

【年度別理学療法士養成校数推移】

養成校養成校数
年度入学定員(人)四年制(校)短期(校)専門職(校)専門(校)合計(校)
昭和38年度200011
昭和45年度1350088
昭和50年度205001111
昭和55年度455022022
昭和60年度9800103343
平成元年度1,0350133144
平成5年度1,8152144359
平成10年度3,520121379104
平成15年度7,182316126163
平成20年度12,524703158231
平成25年度13,460936149248
平成30年度14,0511066149261
平成31年度14,38711161148266
令和2年度14,51411594148276
令和3年度14,57412185145279
令和4年度14,74011876146277
令和5年度14,71412066143275

※日本理学療法士協会の養成校推移を改変。統計開始年である昭和38年以降は、5年ごとに表記。平成31年度以降は1年ごとに表記
※定員数:募集停止を除く
※養成校数:募集停止校を含む

理学療法士の合格者数

理学療法士の合格者数についてです。

養成校数増加に伴い、年々国家試験受験者数と合格者数は増加しています。平成31年度には国家試験合格者数も10,000人を超え、令和5年度には過去最高の11,312人となっています。
少子化が進むなかで、理学療法士の合格者数が増加していることは喜ばしいことです。
しかし毎年10,000人の理学療法士が増加しているため、需要に対して供給が上回るのではないかという理学療法士の質の低下を危惧する声もあります。

年度別の理学療法士国家試験受験者数と合格者数推移は、以下のとおりです。

【年度別理学療法士国家試験受験者数と合格者数推移】

国家試験協会
受験者合格者合格率(%)合格累計会員数(人)
昭和38年度
昭和45年度1,26022417.81,112592
昭和50年度15812579.11,8511,285
昭和55年度32925677.82,7732,038
昭和60年度77172994.65,2554,468
平成元年度1,06498092.18,9677,966
平成5年度1,1091,06996.413,09911,892
平成10年度2,2862,21596.921,30719,206
平成15年度3,6863,62998.537,04433,038
平成20年度7,9976,92486.665,57157,148
平成25年度11,39110,10488.7110,66491,476
平成30年度12,1489,88581161,476119,525
平成31年度12,60510,80986172,285125,372
令和2年度12,28310,60886182,893129,875
令和3年度11,9469,43479192,327133,133
令和4年度12,68510,09679.6202,423136,357
令和5年度12,94811,31287.4213,735

※日本理学療法士協会の理学療法士国家試験合格者推移を改変。統計開始年である昭和38年以降は、5年ごとに表記。平成31年度以降は1年ごと表記

理学療法士の資格に関する手続き

現在まで、理学療法士の資格に関する各種手続きにおいて紙媒体でおこなわれてきました。
オンライン化・デジタル化について説明する前に、現在の各種手続きについて説明します。

  • 登録申請、登録内容の変更(氏名、住所変更)
  • 資格証明

登録申請、登録内容の変更(氏名、住所変更)

登録申請は、理学療法士国家試験に合格した方が理学療法士免許を取得する際に申請する手続きです。
2024年9月時点では、理学療法士免許申請書を記入し、住所地の保健所へ提出する必要があります。

理学療法士免許を登録後、氏名等の変更や再交付、削除申請なども同様に申請書類等の提出が求められます。

資格証明

理学療法士国家資格を証明するには登録申請後、2~3か月後に免許証が交付されます。

一度交付されると、免許証を使用する頻度は少ないです。ただし、転職の場合などに理学療法士免許証の原本またはコピーの提出が必要になる場合があります。

国家資格のオンライン化・デジタル化

厚生労働省によると、国家資格のオンライン化・デジタル化は紙媒体を前提に運用されている多くの国家資格関係事務に対して、マイナンバー制度の活用により各種申請手続のオンライン化や資格情報の連携などのデジタル化を推進するものであるとされています。

オンライン化・デジタル化の経緯や今後どのように変わっていくのかについて確認していきましょう。

  • オンライン化・デジタル化の経緯
  • デジタル化に向けてのスケジュール
  • 利用方法

オンライン化・デジタル化の経緯

国家資格のオンライン化・デジタル化の背景には、マイナンバー法の改正が関係しています。
マイナンバー法が2024年5月27日に改正され、税・社会保障等の分野の国家資格(医師等)がマイナンバー利用事務に追加される運びとなりました。

デジタル化に向けてのスケジュール

2024年8月6日より介護福祉士や社会福祉士、精神保健福祉士、公認心理師のオンラインでの氏名変更や資格証明等の手続きが可能になりました。

2024年11月からは、理学療法士や作業療法士、医師、歯科医師、保健師もオンライン上での手続きが可能となり、2025年3月には新規登録のオンライン申請も開始予定です。

利用方法

マイナポータルから手続きをおこないます。
国家資格のオンライン・デジタル化は、電子証明書が有効なマイナンバーカードをお持ちの方やオンライン化を開始した国家資格を有する方が利用できます。
マイナンバーカードと国家資格の情報を連携するための設定(初期設定)をおこなうことで、国家資格に関する各種申請やデジタル資格者証を取得できます。

マイナポータルでの初期設定は、以下のとおりです。
マイナポータルへログインします。

  1. “さがす”から”#国家資格”または”証明書”を押下する
  2. “国家資格の登録・各種申請”から”資格を追加する”を押下し、登録する国家資格を選択し、その後の手続きは画面の案内に従って操作する
  3. 初期設定が完了後、マイナポータル上でお持ちの国家資格に関する各種申請やデジタル資格者証の取得が可能

理学療法士国家資格のオンライン化・デジタル化のメリットや活用方法

前述したとおり、理学療法士国家資格においても2024年11月からオンラインでの手続きが可能となり、これまでのような紙媒体での手続きが不要となります。

メリットや活用方法については、以下のとおりです。

  • オンライン申請が可能
  • 登録情報をいつでも確認
  • デジタル資格者証の検証が簡便になる

オンライン申請が可能

婚姻や引っ越しなどに伴う氏名や住所変更の際に発生する手続きがオンラインで申請が可能で、マイナンバーを活用するため住民票などの添付書類も不要となります。
また各種手続きに必要な支払いは、オンライン決済に対応している点もメリットの一つです。

登録情報をいつでも確認

2025年春には、国家資格の免許証がスマートフォンに搭載される見込みがあるとされています。
また、ご自身の保有する資格情報をマイナポータル上で確認ができます。デジタル資格証に記載予定の項目は、以下の9つです。

  1. 資格名称 〇〇資格証 
  2. 氏名 苗字 
  3. 生年月日
  4. 登録番号 
  5. 発行日/登録日/交付日
  6. Q Rコード 
  7. 交付機関/者名 
  8. 本人写真
  9. その他項目

デジタル資格者証の検証が簡便

資格保有者が提示・提出したデジタル資格者証に付された二次元コードを検証者側がデジタル資格者証の検証サイトで読み取り、資格の有効性及び真正性(改ざんなどがされていないこと)を検証できます。

また紙の証明書が必要な場合は、PDF形式でデジタル証明書の印刷が可能となります。

それによって、就職や転職などの際に資格証明を求められた際に免許証を用意する必要がなくなり、スマホ1つで完結するため余計な手間を減らせるでしょう。

まとめ

今回は、理学療法士国家資格のオンライン化・デジタル化について解説してきました。
2024年11月には理学療法士も開始される予定のため、皆さんにも必ず関係します。
今後も資格に関する手続き以外にオンライン化・デジタル化が進むことは明白です。
患者さまのために学び続けることも重要ですが、臨床以外の面に目を向けなければ今回のような情報も得ることができません。

自ら常に情報を取りにいく姿勢が重要となるため、多くのことに興味を持ち日々研鑽していきましょう。

【参考記事】

・統計情報
https://www.japanpt.or.jp/activity/data

・国家資格等のオンライン・デジタル化
https://www.digital.go.jp/policies/government-certification

・マイナビコメディカル
https://co-medical.mynavi.jp/documents/rirekisho.html

・資格申請案内
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/shikakushinsei.html

・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の国家資格デジタル化、2024年11月以降から手続き開始
https://www.pt-ot-st.net/index.php/topics/detail/1646