Part③『地域医療への挑戦』
本当にやりたいことは「病院の代わり=真の医療体制の受け皿」(以下Q1~Q4)
Part④『これからの世界観とビジョン』
「目に見えないモノの価値」と「個の魅力の最大化」を追い求めて(以下Q5~Q8)
Part③『地域医療への挑戦』
本当にやりたいことは「病院の代わり=真の医療体制の受け皿」
Q1:亀山先生はまさに地域医療の一端を担う第一人者ですが、取り組むうえで感じている課題や盲点は、どんなものですか?
A:ありがとうございます。
まずは「医師不足」という観点でいうと、北海道においては、札幌市と第二の都市である旭川市以外は人口に対しての医師が不足しているというデータがあるんですね。もちろん北海道に限らず、こういった傾向があると思うんですが、過疎化が進んでいく以上はある程度致し方ない部分ではありながらも、それによって引き起こされている一つの問題点として挙げられるのが、医療機関が1、2か所しかないエリアが存在して、ほぼすべての町民や市民が、対象の医療機関を利用することになんですよね。
そうなると、1日にものすごい数の患者さんが集まることになるんです。言葉を悪く言うと、1日で対応しきれなくなるはずなんです。そうなれば、検査をした結果、「さほど手をかけなくてよい疾患の方」にはなるべく手をかけずに対応して、「本当に手をかけなければならない方」に時間をなるべく割く。
こういった状況が、正直起きているのではないか。と個人的には思うわけです。そして、さらなるリハビリや治療が必要な方に、正しい治療が行きわたらないのではないか。そう感じているわけです。
この状況にもう一つや二つ、医療機関があれば、必然的にひとりひとりに掛けれる時間も増えるだろうと思いますし、私たちのような存在が「受け皿」になれるのではないか。実際に地方に行けば行くほど、「医療機関で十分な治療を受けられなかった、診てもらえなかった。だから整骨院に来たんだ。」という声を聞くんですね。このあたりが地域医療の抱えている課題なのかなと。
私たちは、医師ではないですし、病院と同じほどの価値提供をすることはもしかすると難しいかもしれないけども、少なくとも「痛み」に対してや、「困っていること」に対しては、何かしらの手助けはできるだろうと。そして「地方の問題に対して、何か力になれないだろうか。」そんな考えをもって取り組んでいます。
Q2:亀山先生の「地域医療」へのベクトルというのはかなり強いように感じられるのですが、根差すことになった契機などはありましたか?
A:実は、弊社のマネージャーの鶴野の夢が契機として強いです。
彼は入社して2年になりますが、もとは地方の出身で、今も地方の店舗を運営しているんですけども、先ほど述べたような現状が起きていることに対して、「もっと地方に目を向けて、専門的知識をもっていて、“病院に近いような存在”を目指したい。」という想いをもっていたんです。
経営主義も大切ですが、「本当の意味での医療体制の受け皿」になれるようなスタッフを育てて、地方に展開する方が大事ではないか。ということを彼が明言していたんですね。そしてそれ(地域医療への貢献と教育)を将来自分でやりたいと考えていたみたいなんです。ただ、自分ひとりでやり始めるとなると、経営や、採用など、難しい側面があると感じていたようで、「1から自分一人でやるよりも、みんなと一緒にやりたい」という思いがあったようです。
そんな中で彼が「今のウチ(Y’s Twin社)の力を借りたい。」と言ってくれたんです。私のやりたいことのひとつは『仲間の夢を応援したい』ということで、これは日常でもスタッフによく伝えています。自分もお世話になった方々にそうしてきてもらったので、自分も『仲間の夢を応援したい』と。そう思っているんです。
そんなお互いの想いもあって、かなり私も感銘を受けたので、「夢を応援するというよりも、ウチの会社のビジョンにして一緒にやろう!」とオファーをして、結果、今に至るんです。
なので、私の想いが強く反映されているというよりは、実は鶴野がそのような想いを持っていて、私がそれに共感をして会社でやっていこう!となったのが契機なんです。
一時、私自身も一定に統一された治療マニュアルと広い幅を重視した『仕組み・経営志向』になった時期もあったんですが、なにか自分の中で違和感というか、引っかかるものがあって。。。ただ、この鶴野の話を聞いて、「どうせやるんだったら、都市部で10店舗よりも、本当に困っている地方のための10店舗!」と心に決めました。本当に困っている人たちの助けになっていることが、自分たちの仕事の“やりがい”なんだと。こういった想いの集結によって、『地域医療だ!』となったんです。
逆にいうと、スタッフの『夢』を会社のビジョンにしちゃおうというのは一般的ではないかもしれないですね!(笑)
Q3:いやあ、、、そんなストーリーがあったんですね。スタッフの想いも汲みながら、取り入れて今の風土文化が出来上がっているんですね。私はこのエピソードから「心から自分たちのやりたいこと」をやっているんだなという印象を持ちました。とはいえ『地域医療』を志すことは、採用や集患の観点からみても「茨の道」だと思うんですね。そこで、伺いたいところなのですが、難しさのあるこの「2つの戦略」は正直どのような自社なりの工夫をされていますか?
A:基本的には、結局「人」だと思っているんです。
もちろん企業として「仕組み」は絶対に必要です。ただ、「仕組み」があればどんなスタッフでも売上が上がるなんていう魔法はないと思いますし、そこに「人」という付加価値が付くから、はじめて「仕組み」も活かされて、会社の独自性が生まれると思うんです。そして、それに伴い『結果』がでてくるわけです。
ただ、大前提は結局「人」で、どれくらい人材に対する教育というものをしっかりできるのかが重要だと考えているので、恐らく他社よりもその部分に力を入れているという自負はあります。
そして、「提供したいモノ」に関しては、「なんてことないモノ」にはならずに「一定の水準以上の“医療”」を届ける必要があると思っているので、スタッフが知識・技術に対して高い水準を持っているのであれば、それを最大限発揮できる環境づくりに力を入れています。
例えば、社内勉強会の種類はかなりあるのですが、ウチでは『5スター制度』というものを設けていて、西洋医学・東洋医学・バイオメカニクス・栄養学・心理学の5つのスキルから、勉強したいものを自分で選んで受講できるという状態を整えています。スタンダードに知っておくべき項目はまた別であるのですが、これらはそれぞれが興味をもったスタッフが選択できる状態にしていて、全員が「共通科目と専門科目」をそれぞれ有するような、そんなイメージを会社内で創り出しています。
これらを現場に置き換えて、「栄養学的なアドバイスはA先生へ。運動学的なアドバイスはB先生へ」となるようにしていて、「多角的な治療」ができるような体制を整えています。これは、総合病院に内科や皮膚科、整形外科があるように、これの接骨院版を『総合接骨院』ということで、一通りの疾患に対応できるようなところを創ろうと意気込んでいます。
もちろん、私たちは直接的な免許を保有しているわけではないので、その判断を自分たちが行うことは難しい場合もありますが、総合的な対応ができるような体制は整えておこうと考え、日々取り組んでいるところです。
ですから、「従来の接骨院」ではなく、『病院の代わり』を創る感覚ですね。そういったことを踏まえても「人間力」と「専門性」の部分の教育に重きを置く。
そして、この2軸をもっているスタッフを教育していくというところが、結果的に『戦略』になっていくのかなと思いますね。
Q4:実際に貴社の大きなミッションとして『地域医療』を掲げていらっしゃいますが、北海道外へ出るという展望は、現在のところお考えですか?
A:これはわりとよく聞かれますね(笑)
私の考えとしては、北海道から出るという考えは現時点ではなく、基本は北海道なんです。
ただ、北海道の地方エリアだけ良くなればそれでいいのか。という話ではなくてですね。(笑)
例えば、ウチのスタッフから「道外で開業したい!」となれば、その子が道外で同じ想いを広げてやっていってくれればといいと考えていますし、他社さんが「地方に貢献したい!」となったならば、ウチがひとつの成功モデルのような形となって、どのような「やり方」でそうなっているかを聞いてもらえれば、情報を出し惜しみする会社ではないので、アドバイスとか事例などは伝えられると思うんですね。
私たちがやるのではなく、地域ごとに根差した企業が取り組んでくれたならそれでいいのかな。と感じています。大それたことをやるのではなく、本当に困っている地方の方々にフォーカスをした結果、日本にそういった考えが広まってもらえればそれでいいんです。
この想いや考えが広まれば、「いいよね。」という感じです。
Part④『これからの世界観とビジョン』
「目に見えないモノの価値」と「個の魅力の最大化」を追い求めて
Q5:今日、たくさんことを伺ってきましたが、亀山先生の見解では、どのような「企業としてのあるべき世界観」 を有する集団が、成長を遂げていると考えていますか?
A:そうですね。
個人的には今の世の中は『AI』などが急速に成長してきていて、人が不足してくる分台頭してくるとは思うんですね。
様々な仕事が失われるなんてこともでてくるとは思うんですが、これからの時代は『カタチがあるもの』ではなく、『カタチのないもの』が価値として高まってくると考えているんです。
例えば、『とんでもない効果の出る10万円の腰痛ベルト』というものよりも、『この先生の人柄だから、ここに来る。』というような、『目に見えないモノ』への価値を憶えて選ばれていくような時代になると思っているんです。知識や技術も「体感するもの」であって、『目に見えないモノ』ですし。
これらを考えると、私個人的には「人を大切にして、人のそれぞれの素質や個性を伸ばしていけるような会社」が伸びていくのではないかと予測しています。
Q6:『目に見えないモノ』の価値が上がるということは私も共感できます。”モノ“にありふれている時代なので余計に。そこで先生に改めて伺いたくなったのですが、「無形の価値」を醸成して養う教育は、無形だからこそ難しいと思うんです。亀山先生は、どのようにして、「無形の価値」に対する教育をしていくべきだとお考えですか?
A:私の中では、そもそも学ぶことや成長していくことは一生終わらないと思っていて、弊社でも「プロフェッショナル」という言葉が良く飛び交うんです。もちろん私もまだ目指しているので。
では、「どんな人がプロフェッショナルなのか。」と言われれば、私の中では、『現状に満足しないで、そこに居続けず、常にその先や上をみて、成長を止めない人』が、プロフェッショナルに該当すると考えていて、「人間と治療家」という2軸とも高めていこうという努力を生涯続けていく人であると思うんです。
なので、この2軸での成長を続けていく人たちが「教える側」にいるかどうかが一つ大前提ではないかなと。「教育者側も学ぶことを止めない」といことだと思うんです。でも、これは結局「人間力」というものが根底にないとどうにもならないです。
もっと大きな話で言うと、日本の教育システムが変わらないと辿り着かないような気もしてます・・・・(笑)正直なところは。(笑)
価値観の変容は時代とともに起きているんです。現代では様々な情報が入ってくるようになってきているので、教育への国家レベルの投資がなければ、日本が伸びていくイメージも付きにくいですよね。。。
「道徳心」を伝えるような環境がもっとなければならないと思いますし、20歳そこらで、入社後にそういった部分を私が伝えても、表面的には伝わると思いますし、やろうとしてくれるとは思いますが、本当に社外出て困った人を助けるようになるかというと、おそらくそうはならないですよね。(笑)
会社の中ではやっていても。話は飛躍しましたが、かといって「昔はこうだった」とか、そういった「教育勅語的」なことを教育するのではなく、「一人ひとりの素質」を伸ばすことが大切だと思いますし、「自分の魅力を知っていて、自分の魅力の使い方や輝かせ方」をきちんと知っているスタッフを教育していければ、「無形の価値=自分の魅力の提供」に辿り着けるのではないか。そう思います。
Q7:話を伺うと先生は、日頃から「『個』を伸ばす教育」を意識されているように感じますが、そのために意識している立ち振る舞いや、コミュニケーションのスタンスはありますか?
A:これは実例なのですが、ある女性スタッフが転職してきたんです。
伺うと、割と前職の配転が多かったみたいで。更に聞くと、最終的には現場の教育者からも匙を投げられたような形になっていたらしいんですね。
しかも、「この業界には向いていないのではないか?」とも言われたこともあったみたいなんです。
確かに、配属当初は本人も苦労をしていたように感じましたが、もう一つ私が感じたことは、先ほどもお伝えした「個としての魅力」がある子だということでした。人当たりも良くて、準備もしっかりとしてくれたりだとか。もちろんクオリティの差は時折ありましたが、何よりも素直で、『やろう』としてくれる子だったんです。
なので、もちろん注意することもあるのですが、この子の『個の魅力』や『人間性』に関しての肯定の声掛けをしていって、自らを開放していけるような環境を用意することに、私たちも本人も取り組んだんです。
今では、その本人とご両親から『ウチの会社で勤め続けたい。』という声をもらったりもするようになって、匙を投げかけられた状況から、ウチでは一転、活躍をしていますし、今では居なければ困るほどの存在感があるんです。
ですから、このように『いい部分』や『個性』に触れつつ、苦手な部分は否定しないで受け入れて、「得意と苦手の交換」をしていけばいいと思うんです。これを意識していますね。
4人~5人の院になれば余計に、個性を活かして「得意な人が得意なことをやって、苦手なところは得意な人がカバーし合う」の関係ができます。できないところ伸ばしていく方法もあると思うんですけど、私としては、できないことを本人が「変えたい!」というならば、それはそれで努力の手助をしますが、それよりも「得意なことで人を助けれるようになってほしい」という考えで、そのほうが一人ひとりも伸びると思っています。
苦手なことを連続的にこなすことは、かえって自己肯定感を下げるきっかけにもなってしまいますし。こういったことを色々と考えながら、日々取り組んでいますが、このように言うのは簡単で、実際には、自院以外の院は工藤や鶴野を中心としたマネージャー陣に面倒をみてもらっているのも事実です。その中でやはり難しさや課題はありますが、社全体としてはこのような考え方で経営を進めています。
●論者
亀山 千慧 氏(かめやま ちさと)
1985年12月 北海道江別市生まれ
株式会社Y’s twin 代表取締役
鍼灸学修士・鍼灸師・柔道整復師
【学歴】
札幌青葉鍼灸柔整専門学校
鍼灸学科昼間部 平成19年3月卒業
平成19年4月
札幌青葉鍼灸柔整専門学校
柔道整復学科夜間部 平成22年3月卒業
令和2年4月
明治国際医療大学大学院鍼灸学研究科
鍼灸学専攻 鍼灸基礎医学分野 修士課程 令和4年3月修了
令和6年4月(進学予定)
弘前大学大学院保健学研究科
保健学専攻 総合リハビリテーション領域 博士後期課程
【職歴】
平成21年5月
道内を拠点とする企業を経て、
道内最大グループ院に転職。No.2としてマネージャー職を歴任。
平成27年2月
株式会社ワイズケア入社
北海道ブロック長とFC店のSV職を歴任。
平成28年5月
てて整骨院二十四軒店 独立開院
平成29年5月〜
株式会社Y’s twin設立
令和4年4月〜
札幌青葉鍼灸柔整専門学校
鍼灸学科 非常勤講師
令和5年5月〜
札幌スポーツ&メディカル専門学校
鍼灸学科 非常勤講師
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