はじめに
閉経周辺期の体重増加は広く指摘されてきたが、それが加齢そのものによるものか、閉経(卵巣機能の低下)自体の影響かは長年不明瞭であった。本研究は米国の大規模長期コホート「SWAN(Study of Women’s Health Across the Nation)」のデータを用い、最終月経日(FMP)を基準点として体組成と体重の変化を精密に検証したものである。治療家・運動指導者にとって、閉経移行期(MT)特有の身体変化を数値で理解する意義は大きい。
ポイント
脂肪量はMTに入ると増加速度が約2倍に加速し、同時に除脂肪量(筋肉・臓器・水分等)は増加から減少へと転じる。一方、体重・BMI自体は閉経前から一定の速度で増加を続けており、MT開始時に加速は認められない。脂肪増加と除脂肪減少がほぼ相殺されるため、体重の推移だけでは体組成の悪化を見逃す構造が浮き彫りとなった。MT終了(FMPから約1.5年後)以降は、各指標とも変化がほぼ横ばいへ移行する。
体組成変化の具体的な数値
対象は1246名(黒人356名、中国系153名、日本人178名、白人559名)、平均FMP年齢52.2歳。白人女性を基準にすると、閉経前の脂肪量増加率は年1.0%であったが、MT期には年1.7%まで加速(いずれもP<0.0001)。除脂肪量は閉経前に年0.2%増加していたものの、MT期には年-0.2%へ転じ、明確な減少局面に入る。絶対量に換算すると、MT期の脂肪量増加は年間約0.45kg、除脂肪量減少は年間約0.06kg。MT全体(約3.5年間)での累積変化は、脂肪量が約6%増(約1.6kg)、除脂肪量が約0.5%減(約0.2kg)。対照的に体重・BMIはMT期もそれぞれ年0.3%、0.4%の増加を維持し、閉経前後で傾きに有意差はなかった(体重P=0.98、BMI P=0.5)。
人種差とホルモン療法の影響
白人と黒人女性の体組成変化パターンは概ね類似していたが、日本人女性はMT期に脂肪量・体重とも有意な増加を示さなかった。中国系女性は閉経後に脂肪量・体重が減少し、除脂肪量比率がむしろ増加するという独自の傾向を呈した。ホルモン療法(HT)使用は、脂肪量・除脂肪量・体重・BMIいずれの変化とも有意な関連を示さなかったが、対象者のHT使用が閉経後に限られていた点は解析上の制約として認識しておく必要がある。
臨床・現場への示唆としては、体重やBMIの推移のみでは閉経移行期に生じる実質的なリスク(脂肪増加と筋量減少の同時進行)を捉えきれない可能性が示され、運動指導・栄養指導の場面でDXA等による体組成評価を組み合わせる重要性が改めて浮き彫りとなった。
引用元
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6483504/y, 12:685804. doi: 10.3389/fphys.2021.685804
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